おやすみ、先輩。また明日
あまりの近さにどきどきしていたら、ヤンキー先輩の横からゴホンとわざとらしい咳ばらいが。
「朝からイチャつくのやめてくれる~?
杏ちゃんがぼ~っとしてるのはいまに始まったことじゃないし」
珍しく寝坊せずに電車に乗っている宇佐美先輩。
憎まれ口叩いているけど、眠そうな顔と声だから迫力がない。
「うぜぇぞウザミ。てめーは寝てろ」
「寝たいから言ってんの。イチャイチャして俺の眠りを妨害しないでよねー」
目をつむりながらそう言った宇佐美先輩は、そのまますぐ眠ってしまったらしい。
小さな頭がかくんかくんと船をこぎ始めた。
「くるくる。具合でも悪いのか?」
「ううん。とっても元気! ちょっと寝不足なだけだよ~」
「そうか。そういやお前、今日部活休みって言ってたよな。帰り暇か?」
「え。……ごめんねヤンキー先輩。今日は人と会う約束してるんだ」