おやすみ、先輩。また明日





放課後。

一度家に帰って着替えてから、わたしはお母さんと一緒に外へ出た。



家の近くの静かなカフェ。


そこで待っていたのは眼鏡をかけた、二十代半ばくらいの男の人だった。

スーツじゃなくて、クレリックシャツに細身のパンツをはいた、知的そうな人。



「an(アン)さんですか?」



立ち上がったその人に、わたしは緊張しながらうなずく。

横のお母さんはなぜかわたしより緊張しているみたい。



「はじめまして。星創出版の梶原と申します」


「あ、ど、どうも。桜沢杏です」



もらった名刺を見ると、確かに星創出版の編集者と書いてある。


でも名刺くらい、いまはいくらでも自分で作れちゃうよね。

わたしでもできそう。


疑いすぎだろうか。

< 192 / 356 >

この作品をシェア

pagetop