おやすみ、先輩。また明日
放課後。
一度家に帰って着替えてから、わたしはお母さんと一緒に外へ出た。
家の近くの静かなカフェ。
そこで待っていたのは眼鏡をかけた、二十代半ばくらいの男の人だった。
スーツじゃなくて、クレリックシャツに細身のパンツをはいた、知的そうな人。
「an(アン)さんですか?」
立ち上がったその人に、わたしは緊張しながらうなずく。
横のお母さんはなぜかわたしより緊張しているみたい。
「はじめまして。星創出版の梶原と申します」
「あ、ど、どうも。桜沢杏です」
もらった名刺を見ると、確かに星創出版の編集者と書いてある。
でも名刺くらい、いまはいくらでも自分で作れちゃうよね。
わたしでもできそう。
疑いすぎだろうか。