おやすみ、先輩。また明日
「どうでしょう杏さん。僕と本を作ってみませんか」
「ええと……」
「もちろん、返事はいますぐでなくとも構いません。ご両親とよく話し合っていただいたうえで、連絡いただければ。
ただ出版をバレンタインに合わせて1月と考えているので、かなりタイトなスケジュールにはなるのですが……」
バレンタイン。
そっか。
バレンタインで好きな人にお菓子を手作りする女性がターゲットなんだ。
その中のひとりであるわたしが、本を出す……。
「あの。それって顔や本名を出さなくてもいいんですか?」
「杏。本気なの?」
お母さんは驚いたようだけど、梶原さんは少し嬉しそうな顔でうなずいた。
「もちろん構いません。杏さんは可愛らしい方ですから、顔出しは効果的だと思いますが、まだ学生さんですしね。お母さんも心配でしょう」