おやすみ、先輩。また明日
山中さんはいつも以上に眉をぐぐっと寄せてわたしを睨んでくる。
眼鏡を押し上げる指は震えているように見えた。
「詳しいことはまだこれからなんだけど、その可能性はあるかなあ。
ブログには部活で作ったものもたくさん載せてたし」
「でも部活で作ったやつの中には、わたしや須賀さんが意見を出して作ったものもあったでしょ。そういうのも自分が考えたものだって載せるつもりなの?」
「え……」
「はあ~? 山中ぁ。うちらが言ったのなんて、せいぜいもっと甘くしろとか、トッピングにゴマ使いたいとかそんなもんじゃん」
わたしに抱きついていた須賀ちゃんが、あきれたように山中さんを振り返る。
腰に手を当てる須賀ちゃんは、珍しく少し怒っているようで。
「レシピは全部考えたの桜沢で、うちらはちょっと希望出したくらいっしょ。そこにいちゃもんつけんのはどーかと思うよ」
「いちゃもん? 冗談じゃない。わたしは当たり前のことを言ってるつもりだけど。わたしだって一緒に考えてきた。
経験がないからたいした役には立たなかったかもしれないけど、まったくレシピに関わらなかったわけじゃない」