おやすみ、先輩。また明日


「よく言ったね、杏ちゃん」



聞き覚えのある柔らかな声。


そして、嗅いだことのある柑橘系の香りに横を見ると、宇佐美先輩もいた。



ふたりそろって、なんでこんな所にいるの?



「麻美、この人って……」


「まさか、麻美の彼氏……」



ヤンキー先輩が女子の手を払う。


女子たちは顔を真っ青にして後ずさりしたけど、麻美さんだけは一歩も動けないみたいだった。



「杏」


「は、はい」


「……遅くなって悪かった。もう大丈夫だ」



わたしの小刻みに震える体を強く抱きしめてから、ヤンキー先輩が離れる。



もうちょっと。


もうちょっとだけ、抱きしめていてほしかった……。

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