おやすみ、先輩。また明日
「そうだ、杏ちゃんだ杏ちゃん。可愛い名前だよね~。俺は宇佐美恵(うさみけい)。
言っておくけど、ウザミはあだ名じゃないから」
「はあ。宇佐美先輩、ですね」
覚える必要はあるのだろうか?
首を傾げながら頷くと、「恵でいいよー」と不満げに言われた。
ところで宇佐美先輩は、わたしを下の名前で呼ぶつもりだろうか。
まあいいか。
この流れでヤンキー先輩の下の名前が聞ける。
そう思って先輩を見ると……なぜか笑っていた。
いや、口元を押さえて笑いをこらえていた。
えー。なぜ?
「ヤンキー先輩……?」
「お前の名前……っ」
「えー? わたしの名前、おかしいですか?」
「いや、おかしくはないけど……うちの犬と同じ名前」
「先輩の犬って、トイプードルの?」
「そう。あんこっつー名前で、皆アンって呼んでんだよ」