おやすみ、先輩。また明日
こんなに優しくされたら困る。
こんなに特別にされたら困る。
嬉しいはずなのにどうしてだろう。
つらくなるんだよ。
「泣くな、杏……」
「う……泣いてないっ」
「お前に泣かれると困るんだって」
ぎゅうと強く、長い腕がわたしのまだ少し濡れた頭を抱きこむように、抱きしめてくる。
少しはやい心臓の音は、わたしのかヤンキー先輩のか。
「マジ、困るんだよ……」
「さっきは泣けって言ったぁ」
「泣けとは言ってねぇ」
気遣わしげに、ヤンキー先輩がわたしの身体を離す。
そしてゆっくりと、濡れた目元に唇が落とされた。