おやすみ、先輩。また明日
やっぱりくるくるは犬なんだなってからかわれて、わたしは怒ってみせたけど。
なぜかちょっと、いやかなり、嬉しかった。
何が嬉しかったのかはよくわからない。
でもなんだか胸の辺りがぽっと温かくなって、そして少し気恥ずかしくて、こそばゆい。
そんな不思議な感覚だった。
「もういいですよー、犬で! 犬のわたしから飼い主さまに、捧げ物です」
わたしは鞄から、さっきまでお父さんにあげようとしていたシフォンケーキを取り出した。
ラッピング用の透明な袋に入れただけのそれに、しまったと思う。
リボンくらい、つけておけばよかったなあ。
お父さんにあげるつもりだったから、手抜きをしてしまった。
ごめんねお父さん。
「捧げ物?」
「キーホルダーのお詫びです。部活で作ったもので申し訳ないんですけど、気持ちなので。
あ、甘さは控えめだから、ヤンキー先輩でも食べられるんじゃないかなあと。無理だったら、捨ててください」
「へぇ。杏ちゃんの手作り?」