おやすみ、先輩。また明日
不意に右肩が叩かれた。
「おい、くるくる。大丈夫か?」
「はっ……! わ。いまわたし寝てた?」
「頭もげそうなくらい揺れてたぞ」
ヤンキー先輩の前で恥ずかしい。
わたしは朝の通学電車の中で顔を隠した。
最近レシピ本のことで寝不足だし、疲れもかなり溜まっている。
まだ10月に入ったばかりでこれからなのに、こんなんじゃだめだ。
「バイトでお疲れみたいだね~」
なぜかわたしの左隣りに座った宇佐美先輩が、目をこすりながらそう言うから笑う。
宇佐美先輩の方が寝むそうじゃん。
あれからわたしと宇佐美先輩は気まずくなることもなく、むしろちょっぴり仲良くなった。
宇佐美先輩は変わってない気がするけど、わたしが彼のことを素直になれない優しい人だってわかったから。