おやすみ、先輩。また明日
本にするにあたって、それが気になっていたんだ。
なにせ実は仮タイトルがタイトルだったりするし……。
「それはないですよ。すみません、そんなつもりで言ったんじゃないんです。
杏さんに慕われているその先輩が、うらやましいなと思っただけなんですよ」
さすが編集者さん。
持ちあげるのが上手い。
でも梶原さんが言うとあからさまなお世辞っていう感じも嫌味もなくて、悪い気はしないんだ。
「いつか叶うといいですね」
「ありがとうございます……」
いつか、恋が。
そんな日は来るだろうか。
想像しようとしたけれど、何度やっても失敗した。
わたしの想像力が足りないだけ、と思いたかったけれど……。
期待する気持ち、悲観的な気持ち、見返りは求めないと強がる気持ち。
わたしは最近このバラバラな気持ちにやられつつあった。
はじまりは、あのヤンキー先輩に抱きしめられた夜から……。