おやすみ、先輩。また明日
宇佐美先輩が、ヤンキー先輩の手に渡ったシフォンケーキをのぞきこむ。
やっぱりわたしのこと、名前呼びなのか~。
「それはもちろん! 調理部ですからね」
「いいな~。杏ちゃん、俺の分は?」
「え。えーと、ごめんなさい。1つしかなくて」
「残念。藤~。俺にもひとくちちょうだい」
「顔近づけんなウザミ。やらねぇよ」
ヤンキー先輩は宇佐美先輩の綺麗な顔を乱暴に押しのけて、シフォンケーキを守るように鞄にしまった。
大事にしてくれてるみたいで、なんだか嬉しい。
「藤のけち。じゃあ杏ちゃん。今度俺にも何か作ってね」
「はあ。いいですけど」
「やった。俺柑橘系嫌いだからよろしく」
作ってね、なんて。
社交辞令だろうと思って、うなずいておいた。
宇佐美先輩はモテそうだし、女性にの扱いには慣れていて、誰にでもこんな感じなんだろうなとわかったから。