おやすみ、先輩。また明日

ゆっくりと、山中さんが膝に埋めていた顔を上げる。


涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔。

鼻と頬が真っ赤でひどいことになっている。


でも、可愛いと思った。



「なんで桜沢さんなんかに知られなきゃなんないの……」



濡れた眼鏡をぬぐいながら文句を言う彼女に、つい笑ってしまった。



「わたしなんかですみませんね」


「……あなたのそういう所が嫌いなの。もっと怒ればいいじゃん。責めればいいじゃん。
こんなに馬鹿にしてるのに嫌いじゃないなんて、気持ち悪い」


「えぇ~……気持ち悪いまで言う? でも理由がわかったらさ、余計嫌いとか思えないよ。
むしろ納得した。そういうことだったのか~って」


「……やっぱり桜沢さんて、ばかなんだ」



それから怒ったような、照れくさそうな顔で、山中さんは話してくれた。



入学当初から、神林先生に一目ぼれして入部したこと。


わたしばかりが神林先生に頼られて頼みごとも多く受けていて、嫉妬したこと。


神林先生に気に入られているくせに、男子生徒との褒められたものじゃない噂が流れて腹が立ったこと。

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