おやすみ、先輩。また明日


「それにあなたはわたしと違って綺麗だし、性格も良いから、鼻についたの」


「は、鼻についた……」



さすが山中さん。

弱っていても言葉の棘は鋭い。



「桜沢さんにケチつけたって、何になるわけでもないことはわかってた。でも止められなかったの」


「……わかるよ。片想いってしんどいもんね」


「何言ってるの。あなたは両想いでしょ」


「まさか~。彼女がいる人を好きになって、両想いなわけないよ」



山中さんは意外そうな顔でわたしをまじまじと見る。

そんなに驚くようなこと言ったかなあ。



「あの、ヤンキーみたいな人でしょ?」


「うん」


「あなたの片想いには見えなかったけど」


「そ、そう? でも実際は片想いだよ」


「……わたし、恋とかしたことなかったから、よくわからない」



そう呟く山中さんの横顔は、しっかり恋する乙女だった。

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