おやすみ、先輩。また明日
「ヤンキー先輩……? わっ」
なぜか、ヤンキー先輩の表情がくもった気がして。
気になって顔をのぞきこんだけど、髪をぐしゃぐしゃに乱された。
誤魔化されたんだろうか。
「杏ちゃーん。チョコ好きって誰のこと?」
「え? 誰って……」
「俺も藤も特別好きってわけじゃないじゃん?」
「えーと、秘密!」
これはわたしがあげるやつじゃない。
山中さんが神林先生に渡すチョコの試作品だ。
わたしが考えすぎてても意味ないんだけど、自分のレシピは完成してるから、手持無沙汰でつい。
「ふーん。気になるねぇ、藤?」
「……別に」
声が一段と低くなったヤンキー先輩。
なぜか機嫌を損ねてしまったみたい。