おやすみ、先輩。また明日
「もうすぐバレンタインだね」
昼休み。
お弁当を食べ終えてそう呟いたのは山中さんだ。
声は少し緊張しているみたい。
「そうだねえ。作るの、どうする? 前の日わたし、一緒にやろうか」
「ううん、ひとりでやってみたい。練習もいっぱいしたし。……ありがとう、桜沢さん」
「いーえ。そっか、うん。がんばってね」
「がんばってねって……あなたはどうするの?」
山中さんは、わたしが最近ヤンキー先輩を避けていることに気付いてる。
だから心配してくれているんだと思う。
まさか山中さんがわたしの心配をしてくれるようになるなんて。
「大丈夫だよ。わたしも作るから」
「そうなの? ……あ、噂をすれば」
「え?」
「本命の方じゃないけど、ほら」
山中さんの指した指の先には、教室の入り口にもたれて立つ宇佐美先輩がいた。