おやすみ、先輩。また明日
放課後。
帰り仕度をして、わたしはかちこちに固まっている山中さんの肩を叩いた。
「大丈夫? 山中さん」
「桜沢さん……だめかもしれない」
珍しく弱気な言葉に声。
今日は部活が休みだから、彼女はこれからひとりで神林先生のところに行ってチョコを渡すんだ。
チョコファッジは上手く作れたみたいだけど、顔色がとんでもなく悪いから心配になる。
「い、一緒に行こうか?」
「ううん、平気。ひとりで行く。ありがとう桜沢さん」
あなたもがんばって。
青い顔でそう言われて、わたしもつられて緊張しながらうなずいた。
相手は神林先生だから、きっと大丈夫。
どれだけ山中さんが岩みたいにがちがちになっていても、神林先生なら優しくあったかく迎えてくれるはず。
もう1度山中さんの肩をはげますように叩いて、わたしは廊下に出た。