おやすみ、先輩。また明日
男の家庭科の先生っているんだなあと、初めて会ったときびっくりしたっけ。
でもこの先生はフライパンを振る姿も、裁縫をする姿もまったく違和感がなくて、それどころか女子生徒の誰よりも似合っている。
優しいから女子からの人気も高くて、わたしももちろん神林先生が大好きだ。
特別な意味はなく、先生として。
「山中さんも須賀さんも、ケンカするほど仲が良いと言うけどほどほどにね。
できれば部長の耳には届かないくらいの声でやってくれると助かるなあ」
「神林先生、聞こえてますよ!」
部長の厳しい声に、先生は冗談だと笑う。
一気に場が和んで、わたしはそっと息をついた。
「2人とも、桜沢さんの話しをしっかり聞いてがんばって」
「は~い! もちろん!」
「……わかってます」
2人の返事に満足したようにうなずいて、神林先生はわたしを見た。
無意識に背筋がぴんと伸びる。