おやすみ、先輩。また明日

視界に入る相手のズボンは黒。

この電車に乗る黒の制服は、高校生だとうちの学校の学ランだけ。

とても大きな白いスニーカーを履いてるから、きっと中学生じゃないだろうし、同じ高校かな。



ふと、鼻を苦い香りがかすめた。

これは多分、煙草の匂い。



「すげぇ絡まってる。取れそうにねぇわ」


「え~。それは困りましたね……」


「何でこんな髪くるくるなんだよ。パーマ?」



苛立った声に非難するように言われて、少しむっとする。


ちょっと待ってよ。どうしてわたしが責められるの?

わたしの髪が、くるくるしているのがいけないわけ?

だったらそっちがキーホルダーをつけているのもいけないんじゃない?


そう言ってやりたくなる。

まあ実際にそれを口にする勇気はないのだけれど。


偶然絡まってしまったんだから、仕方ないのに。

しかも痛い思いをしているのはこっちだ。

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