おやすみ、先輩。また明日
ギョッとしたようにホイッパーを落とした山中さんを横目に、わたしは仕方なくドアの前に立つ。
「何しに来たんですか、宇佐美先輩」
「何って、約束したじゃない。今日は何を作ってるの?」
「約束?」
「杏ちゃん意外と薄情だね。俺にもお菓子、作ってくれるって約束だったでしょ」
そんな約束したっけ?
ああ、そういえば、駅でそんなようなことを宇佐美先輩が一方的に言っていたような。
「だからって、いまは部活中ですよ」
「えー? 部外者は入っちゃいけない? 見学とかもダメ?」
見学はいいかもしれないけど、明らかに宇佐美先輩は別の目的があるじゃないですか。
呆れていると、急に大きな手が現れて、宇佐美先輩の頭にげんこつを落とした。