おやすみ、先輩。また明日
壊すって、キーホルダーを? いいの?
髪ならまた伸びるけど、キーホルダーは直らない。と、思う。
それなのに、壊してしまっていいんだろうか。
考えているうちに、耳元でパキンと小さな金属音がした。
直後痛みから解放されて、ほっと息を吐く。
まだじんじんする髪の根元を押さえながらそっと顔を上げると、そこには少し残念そうに壊れたキーホルダーを見つめる、背の高い男の人がいた。
白いシャツに刺繍された校章は、やっぱりわたしの通う東円寺高校のもの。
長めの黒い前髪の隙間からのぞく奥二重の目は、切れ長でちょっと怖そうな印象だ。
しかも耳にはシルバーと黒のピアスが3つも。
軟骨の部分にもピアスがついていて、思わず痛そうだと顔をしかめてしまった。
そして着崩した制服に、煙草の匂いとくれば。
まちがいない、この人は不良だ。危険人物だ。
わたしはなんて人の私物を壊させてしまったんだろう。