おやすみ、先輩。また明日
「わー! ご、ごめんね先輩! 飲んでるの気付かなくて!」
「くるくるか……。ったく、何してくれんだ」
呆れたように言うヤンキー先輩に、髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜられた。
怒ってないみたい。ちょっとほっとする。
慌ててハンカチを出して先輩の口元を拭こうと手を伸ばした時、もう1人の存在に気付いて今度こそ動けなくなった。
「きみって本当に藤しか見えてないみたいだねぇ?」
そこに立っていたのは、真っ白なシャツを茶色に濡らした宇佐美先輩。
いつもの張りつけたみたいな笑顔も引きつっていて、倍恐ろしい。
「意外とそそっかしいよね、桜沢杏ちゃん?」
「す、すみませんでしたぁっ!!」
宇佐美先輩の背後に般若が見えた。
涙目で、土下座する勢いで謝る。
ハンカチを差し出したけど、いらないと断られてしまった。