おやすみ、先輩。また明日
「宇佐美てめぇ、こいつに何した!? ああ!?」
どんな早技なのか、ヤンキー先輩が宇佐美先輩の喉を片腕で圧迫するようにして、廊下の壁に押し付けていた。
うわわ、ヤンキー先輩キレてる!
目が据わってる!
わたしは慌ててハンカチで目元を拭った。
これまででいちばん、ヤンキー先輩がヤンキーっぽいところを見たかもしれない。
「別に何もしてないけど? ちょっと喋ってただけー」
「じゃあ何でこいつが泣いてんだよ」
「さあね。俺の口が悪いからじゃない? 俺って正直者だからさぁ」
「ふざけてんのか」
「全然? ねぇ、杏ちゃん。俺きみにひどいことした?」
ヤンキー先輩の腕を払って、小首を傾げて悪気のない顔で聞いてきた宇佐美先輩に、わたしは黙って首を振る。
キツいことは言われたけど、ひどいことなんてされてないから。
さっきの涙はたぶん、
自分の為に流れ出た涙だと思う。
溜めこんでいたら、体にも心にも悪いからって。