おやすみ、先輩。また明日

反対のホームに移動すると他に人はいなくて、ベンチに並んで腰かける。

すぐさまヤンキーな先輩は煙草の箱を取り出して、1本口にくわえた。


その動きが流れるようで色っぽくて、横目で見ていたわたしはちょっとどきどきしてしまう。

なんだかこの人、妙なフェロモンが……!



「あ、あの。キーホルダーすみませんでした」


「んー。まあ、しょうがねぇよ。気にすんな」



そう言われても。

さっきのあなたの残念そうな顔が忘れられないんです。



「ちょっと見せてもらえませんか? もしかしたら、直せるかもしれないし」


「いや。完全に金具折っちまったからムリだろ」



くわえ煙草で、ヤンキーな先輩はポケットからそれを取り出した。

彼の大きな手のひらに乗せられたのは、びっくりするくらいファンシーなキーホルダー。


苺の乗ったカップケーキがちょこんと手のひらに鎮座していて、わたしはまじまじと覗きこんでしまう。



わー。これ知ってる。

スイーツデコってやつだよね。


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