おやすみ、先輩。また明日
自分に呆れながらドアに手をかけた時、中から聞こえてきた声に固まった。
「正直、桜沢ちゃんは調子乗ってるよね~」
廊下にまで響いた声は、2年の先輩のものだった。
山中さんも聞こえたみたいで、黙ったまま動かない。
「今日友だちにさぁ、桜沢杏は藤くんと宇佐美くんのどっちを狙ってんの? って聞かれたんだよね~」
「あー。結構噂になってるよね。電車の中でもべったりらしいじゃん」
「この間も2人、ここに来たしね~。なんて返していいかわかんなかったよ」
「藤くん狙いっぽいって聞いたよ。でも彼って他校に彼女いたよね?」
「だからヤバいんじゃん。藤くんも宇佐美くんも人気高いからさ~。2~3年の女子に、桜沢ちゃん目つけられてんだよ」
「うわー。呼び出しとかされたりしてね」
「別に桜沢ちゃんは自業自得だけどさ。部活の先輩であるうちらにまで飛び火してきたら困るよね~」
ほんと迷惑。
そううんざりとした声で言われて、わたしは頭が冷えた気がした。