おやすみ、先輩。また明日
宇佐美先輩に色々言われた時は、動揺して考えがぐちゃぐちゃになって涙が出てきたけど。
いまはそう。客観的になれている。
よく友だちが、モテる女子のことをこんな風に嫌そうに話してるけど、
実際自分が言われるとこんな重たい気分になるんだなあ。
「へえ、そうなんだ」って友だちに合わせてうなずいていたけど、
これからは安易に同調したりするのはやめようと思った。
「……ほら、結局こうなんだよ」
「え?」
それまで黙っていた山中さんが、わたしの真横に立って眼鏡を押し上げた。
ひどく冷たい横顔だった。
「恋愛なんかに没頭してると、周りにそういう目で見られるんだよ。バカ女ってね」
鼻で笑って、山中さんは調理室のドアを開けて先に入っていった。
すぐにピシャリと閉められたドアの前で、わたしは立ち尽くす。
そうか。わたしはバカ女なのか。
しばらくそうしていたら、不意に肩を叩かれて、不思議そうな顔をした部長に顔をのぞきこまれた。
「どうしたの、桜沢」
「部長……」