おやすみ、先輩。また明日
ああ、そういうことか。
わたしを彼女に見立てて演技したってことね。
これは、なんとも言えない微妙な気分だなあ。
フリでも先輩の彼女に一瞬なれたことを喜ぶべきか。
本当の彼女がいるのにと、虚しく思うべきか。
どっちの気持ちも、同じ分だけわたしの中に生まれた。
少し前のわたしなら多分、もっと喜んだと思う。
でも昨日先輩と彼女が手を繋いでいる姿を見てしまったから……。
まだわたしの手を掴んでいた、先輩のゴツゴツと骨ばった大きな手。
それがゆっくりと離れて、わしわしとわたしの髪をかき混ぜる。
「先輩、髪乱れちゃうよ~」
「……やっぱ、元気ねぇな」
「え?」