強迫性狂愛
第3章
嫌がらせ
――…
「ねー、紅…これも教えてくれる?」
「これも、ですか?」
いつもとは違う鋭い紅の視線に、思わず口ごもる。
「だって、わかんないだもん」
「……はぁ、百花の記憶力は一体どうなっているのか、一度覗いてみたいわね」
「いいよ?覗いてみる?」
半分冗談で言ったのに、紅は目を鋭く光らせて
「これじゃあ、進級できませんよ?」
文句を言いながらも、優しく丁寧に教えてくれる。
いつのまにか、紅は私のことを百花、と呼ぶようになって。
様つけで呼ばれていた時よりも、距離が近くなったみたいですごく嬉しかった。
紅といる時間は楽しくって、この時間があるからこそ家族のことを思い出して、泣くことも少ないのだといつも実感する。
このテストが終わったら、もうすぐ夏休み。
夏休みくらいは家に帰れるよね?
――そう思っていた私が浅はかだったのだとわかるのは、数日後のこと。