強迫性狂愛
その日の帰宅途中の車の中


「ねぇ、いつから気付いてたの?」

「何に?」

「んー、上履きとか?」

「紅に聞いた」

「そっか」


やっぱり、と納得して座り心地のいい皮シートに身を沈めた。


「何かされたら、ちゃんと言え」

「…ん、わかった」


そのまま、瞳を閉じる迅を見つめながら


ありがとう、と心の中で呟いた。


好きにはなれないけれど、嫌いにもなれない。


感謝なんてすべき人じゃない、だけど――…守ってくれるから。


「ありがとう」って言いたくなる。

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