強迫性狂愛
あれ…?お母様だけ…なのかな。

キョロキョロと、辺りを見渡していると


「…宮原 百花さんかしら?」

「あ、はい」


想像していたよりも…すごく、優しそうな声色にホッと胸を撫で下ろした。

そのまま、綺麗な顔をしたお母様にずっと視線を送っていると

私の視線に気付いたように静かに微笑んだ。


「なぁに?あぁ…主人なら来れないの。ごめんなさいね。あなたがここにいることは認めているから気にしないで頂戴ね」

「は、はぁ…、いえ、はいっ」


意味もなく頭を深々と下げた時に


「百花」


フワッ、と消毒液のにおいと共に、お腹に手が回されたことに気配のするの方に振り返ると


「迅…?」


額にうっすらと汗をかいている迅がいたことに驚く。


「どうしたの?」

「お前が母に会うと聞いて急いで…」


「汗かいてるよ」と迅の額に手をかけると


「まぁまぁ…っふふふ。いいわねぇ」


手を口元に当てたまま上品に笑うお母様がいた。

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