強迫性狂愛
――…
「はい、もも」
目の前に差し出された紅茶の紙パックを手に取る。
「ありがとう…」
そのまま、私の隣に腰掛けた十河くんと明日体育祭が行われる会場を眺めていた。
「ももはさ、自分のことどのくらい知ってる?」
「…自分のことって…」
言葉の詰まる私に十河くんは、今までにないくらい優しい声色で話し始めた。
「聞いたことない?陰華の巫女とか」
「……ないよ」
「そっかぁ、説明してもいい?」
「………」
どうして確認を取るのか、十河くんの探るような瞳が、胸の内の鼓動を強くしている気がしてたまらない。
十河くんは、「説明するね」と一呼吸おいてから、話し始めた。
「陰陽の陰に、華やかの華に、巫女…で、かげのはなって呼んでるんだ」
「巫女?」
「そう巫女。陰華の巫女は―…」