強迫性狂愛
『だって…お母さんは普通の人だったもん、お父さんだって――…っ』


『もものお母さん…果音さんは、陰華の巫女。

それは、間違いないから』


『どうして、そんなこと…十河君がわかるの?』



家族である私でさえ知らないことを、どうして十河君がわかるっていうの?

それに…どうして……お母さんの名前を知っているの…?



『さぁ?どうしてだろうね』


『……信じない』


『………』


『信じない……信じないからっ!その変な巫女だとか言う話も…なんで…っ十河君がお母さんの…名前、知ってるのかなんて――…嘘…』



混乱する私に、十河君は軽く笑って話を続ける。



『もも。黒澤のところから離れて、俺のところに来るんだ。必ず幸せにする。そうしたら、全て話す』


『…意味、わかんない……っ』



全てって…?


全てって…そんなの――…っ



そのまま、十河君は席を静かに立つと、私の方へ一度だけ振り返って『もも、またな』と笑って体育館を出て行ってしまった。
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