強迫性狂愛
「ほんと…、なの?」


お母さんは、深く瞳を閉じてから私を真っ直ぐに見つめながら目尻を下げた。


「……ごめんね、百花」

「うそ…」


いつのまにか流れていた涙さえ拭うのを忘れて、ゆっくりと首を横に振り続けた。


もう夕暮れだったけれど、目の前が真っ暗に見えた。

いつも、いつだって…私のことを守ってくれたお母さん。

嘘だって…


ねぇ、嘘でしょう?


「百花、黒澤さんのお宅に戻りなさい」


黒澤…そう。

あの男の人は、黒澤っていう人なんだ…

頭の片隅でそんなことを思った。


「嫌だ…嫌だよ、お母さん…」

「大丈夫。彼は百花を守ってくれる。だから…」

「嘘!そんなわけない…」


お母さんの言うことを聞かない、駄々っ子のようにしゃっくり上げて泣き続けた。
< 27 / 745 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop