強迫性狂愛
「あのね、紅。実は…その、確証はないんだけど…迅がその…」

「病気がよくなったって…」

「う、うん…」

「ちょっとまって、百花は陰華の巫女なのに…どうしてここにいるの?」


額に手を当てながら、いつも冷静な紅が戸惑っているのが見て取れた。


「え?」

「いえ、その…悪い意味ではなくて……陰華の巫女は、前にも言ったけれど嫁ぐ場所というか、進むべき場所は決まっているはずなのに…それに、どうして…一般の家庭にいたの?」

「一般の家庭って?」

「確かね、私のお婆様から聞いた話では、陰華の巫女は…えっと、なんだったかな…どこかの一族が守っているって話で。その一族が嫁ぎ先を決めているんだって…聞いていたから。どうして、百花は普通の家にいたのかなって思ったの」

「……お父さんもお母さんも普通の人だったよ?」

「…ということは、やっぱり噂話と現実は違っているってことなのかしらね」

「そういうことなのかな…?」

「でも、百花が本当に陰華の巫女だとすると」

「すると?」

「――…百花は黒澤様のことが好きなの?」


突然の紅からの言葉に


「……ごふっ、」


口に入れかけたクッキーを吹き出しそうになった。

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