強迫性狂愛
私の言葉に、目を見開いた十河君は、はにかみながら笑って


「まじで?よかった。てゆうか、ももにそう言われるなら早く染めればよかったな」

「あ、先生に言われてたの?」


私の隣までゆっくりと歩いてきた十河君は真っ直ぐ前を見て


「本気にならないと駄目っぽいから」

「本気に?先生に言われたんじゃなくて?」

「そう」

「何に、本気になるの?」


十河君は私の方を一切見ないまま、低くけれどはっきりと言い切った。


「百花に」


サァ…ッと、非常階段を駆け抜ける風が冷たく吹いて、百花と十河君の黒髪が大げさに揺れた。

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