強迫性狂愛
窓にそっと手を添えて


広がる風景を捕らえながら思い出すのは、お父さん、お母さんの顔。


もう、会えないなんて。

お父さんは、昨日の朝会ったきり…お母さんみたいに「さよなら」も言えなかった。


思い返せば、思い返すほど、溢れてくるのは後悔ばかり。

零れた涙を拭って、窓の傍にあるイスにそっと座った。




しばらくぼんやりと窓の外を眺めていると


「百花さま」

「……紅さん」

「お食事をいたしましょう」

「いりません」

「駄目です。お召し上がりください」

「………」


私は、出された食事に一切手をつけなかった。

紅さんがため息を零していたのもわかったけれど。

それでも、食べたいなんて思わなかった。



――…


「おい」


日も沈んで、部屋の中が夕暮れ色に染まる頃。

不機嫌そうな声が響いた。


「………」


返事もせずに、無視していると


「いい度胸だな」


私の目の前に立ちはだかった。
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