強迫性狂愛
「知ってるって…?」
「今日、迅が柚香さんと登校すること…」
「百花…」
紅が、私の上履きをくまなく見ている視界の隅に――…
迅と一緒に車を降りてくる柚香さんの姿が見えた。
――…結局、あれから迅は帰ってはこなかった。
黒澤家に来てからの、初めての一人ぼっちの夜だった。
何度も夜中に目を覚ましては、迅の姿を目で追った。
何度、目を開いても、名前を呼んでも…
帰ってこなかった。
メールの返事さえなかった。
一人になって気付く、あれだけ迅が傍にいてくれたからこそ……私は両親がいない寂しさを紛らわすことができていたのだと。
異常なまでの不安と、悲しみが心から染み付いて離れなかった。
ほとんど眠れないまま――…朝を迎えた。