強迫性狂愛

「……っ、ぅ…っ」



まだ、沢山の人が登校してくる中、紅を手を繋いで歩いた。


俯いたまま、涙を必死で堪える私の背中を紅は、何度も優しく擦ってくれた。



「先生、今日はいらっしゃらないみたい。傷は私が消毒してあげるわね」


「ありがとう…」



無言のまま、紅が私の中指に消毒液をかけて、絆創膏を貼ってくれた。



「泣かないの…?」



ポツリと言葉を落とす紅を見上げた。



「声、上げて泣きなさいよ。必死で涙堪えてたら…出すもの出せなくなっちゃうわよ?」


「紅……」


「一人のほうがいい?そのほうが泣ける?」


「べにぃ…っ」



優しくて、頭を撫でる紅の姿が、一瞬お母さんとかぶる。


溢れた涙も、嗚咽も、思いっきり体中から流れるように――…思い切り声をあげて泣いた。
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