強迫性狂愛
不安定な心
その頃――…
「いいの?こんな寄り道なんてしちゃって」
「いいよ。言ったろ?俺んち黒澤みたいに立派な家柄じゃないし」
「そうなの?」
クスリ、と笑って俺を見つめてくるももに、思わず笑った。
「寒くない?」
「ん、コート着てるから…平気だよ」
「元気がでない時はさ、こうやって外の空気思いっきり吸い込むだけで元気になったりするんだよな」
「……そうだといいなぁ…」
そう言って、寂しそうに笑う百花の手をそっと握った。
「翔くん?」
「…俺の親父がさ、昔すっげぇ欲しいものがあったんだって」
百花が戸惑うように、俺の手から逃げようとするのを、思わず押さえ込んだ。
「…欲しいもの?」
「そ。命かけても欲しいものがあったんだって」
「そうなんだ……すごいね」
そう言って、遠くの空を見つめて目を細める百花を少しだけ切ない想いで俺は抱きしめたい衝動に駆られながら…無理やり繋いだままの手をグッと強く握り締めた。