強迫性狂愛



「よっ、寒いから。乗れよ」



泣きじゃくった私を、翔くんは決して電話を切らないで私の気持ちが落ち着くまで待っていてくれた。


そうして、どこにいたのかすぐそこにいるからと、黒澤家の屋敷の前まで迎えに来てくれた。



「あの、夕方には、戻ります…」


「はい、かしこまりました。お気をつけて」



メイド頭の柏木さんに事情を話して、外に出た。


昨日、降った雪がうっすらを残っている道を滑らないように気をつけて、門番の犬達を撫でて翔くんの車へと乗り込んだ。



「さみぃな、今日」


「そうだね、しばらく家の中にばっかりいたから余計に寒く感じる…」



車の窓から、外の景色を眺めて呟いた。



「家の中ばっかりだと腐っちまうぞ?」


「そうなの?」


「百花、ここは笑うとこ。真剣に受け止めない」



そう諭すかのように、はにかみながら笑う翔くんに、最近は救われてばかり。


少しだけ冷たくなった手を擦り合わせた。
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