強迫性狂愛
「ひどい…」

「ひどいのは、どっちだ。あとでシェフに謝りに行くといい」

「どうして?」

「朝も昼もお前の分を作ったのに、無駄になったからな」

「……わかりました」


自分に非があることがわかっているからこそ、何も言えない。

並んだ2つの食事に、黒澤迅もここで食べるのだとわかり、気を重たくなりながら、席に着いてあたたかい食事を1日ぶりに取ることができた。



「―…百花」


食事後のお茶を飲んでいると、黒澤迅が、口を開いた。


「なに?」

「学校に行きたいか」

「…それは、そうだけど」


もう退学手続きしちゃったんでしょう?


「そうか…」


そのまま紅茶のカップを置いて、黒澤迅は紅に話しかけてから、部屋を出て行った。


「あの、ご馳走様でした」

「いえ」

「あの、シェフさんて…」

「今日はもう、遅いので明日の朝の方がいいかと思います」

「そう、ですよね」


にっこり笑う紅さんに、なんとなく朝感じた冷たい印象とは違うような気がしてきた百花だった。
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