強迫性狂愛
今――…



この屋敷には、誰もいない…


今…ううん、今しかできない。


紅がきたら、きっと何か感づいてしまいそうな気がしてならない。


それに――…迅の顔を見てしまったら…きっと決心が鈍ってしまう。


チラ…、と自室の化粧室に目を向けてから、また視線を足元に戻した。


駄目…


恐い。


だけど―…もし、本当に妊娠していたら?


ううん、妊娠なんてしてるはずかない。


――…だけど、万が一…


百花は、覚悟を決めたかのように、グッと息を呑んで茶色い紙袋を持ったまま化粧室へと足を踏み入れた。
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