強迫性狂愛
震える手で、検査薬をしっかりと気付かれないように密封して、ゴミ箱にいれてから


百花は、窓辺のイスにもたれたまま―…何も瞳に映し出せないでいた。



「――…百花様?大丈夫でございますか?」


「あ…、柏木さん…」



何度か声をかけてくれたのだろうか。


気付くことなかった自分に驚きながら、柏木さんに視線を向けた。



「具合が悪いようでしたら、今日は夕ご飯は胃に優しいものに作りますが…」


「夕ご飯は……ちょっと、食べれないです…」



無理…


迅に、会うことなんてできない。



「では、この生姜湯はお飲みになれそうですか?」


「あ、はい…」



ゆっくりと目の前のテーブルに置かれた、静かに湯気が上がるカップを見つめた。



「では、失礼します」



部屋から出て行こうとする柏木さんに



「ありがとうございます…」



こんな、私を気にかけてくれてありがとう…


そう、意味を込めて深く頭を下げた。
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