強迫性狂愛
いつもなら、柚香さんと車で待っているはずなのに、わざわざ私を部屋まで迎えに来てくれた。


…柚香さんが来る前は当たり前だったはずの行為に、泣きたくなるほど嬉しいなんて。


どうかしてる…


本当に、たったこれだけで泣けてくる自分は―…どうかしてるんだ。


そう思いながら、百花は、ギュッと迅の手を握り返した。



「…柚香さんは?」


「…今日はいい」


「いいって?」


「あれといると疲れるからな」



そう言って小さく頬を緩ませる迅は、柚香さんのことを想っているのだと、好きなのだと…


思い知らせるようで、胸が痛かった。


それでも、繋いだ手を離すことができない自分をひどく惨めに感じていた。
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