強迫性狂愛
「黒澤様…」
声のする方を見れば、目を真っ赤にさせた紅が立っていた。
「百花が落ち着いたら、呼んでくれ」
「かしこまりました」
俺は、拳を握ったまま、食堂へと急いで戻った。
食堂には、呆然と佇む母さんと僅かに震えた柚香の姿。
俺は―…
柚香との婚約に対して何一つの感情さえ持っていなかった。
黒澤家の跡取りである以上、柚香、もしくはそういった家柄との結婚は避けられない。
そういう決められた事例については、諦めることはひどく慣れていた。