強迫性狂愛
結局、その日は授業を出ることもなく、ただ一日中図書室で黒―……迅と、過ごしただけだった。

一緒に本を読んだり、意味もなく手を繋いだり、なぜか膝枕をしたり…


思っていた以上に、静かで…


穏やかな時間が流れていくことに、心まで透き通っていくような妙な感覚を覚えていた。


「――…迅でいい」


私が呼ぶたびに「黒澤 迅」とフルネームで呼ぶことに対して、ため息と共に鋭い睨みを利かされて

渋々、迅…と名前で呼ぶことになった。


「ねぇ、授業出なかったけど先生に怒られないかな?」

「関係ない」


帰りは、朝あれだけ紅が気を利かせてくれたにも関わらず、手を引かれるまま仕方なく迅と一緒の車に乗り込んだ。

何度も紅に呼び止めらたけれど、迅はそれをことごとく無視していた。

何人もの生徒に見つめられながら、車に乗るのはいい気分ではなかったけれど……仕方ないのだと、必死に自分に言い聞かせた。


この人が――…私を守ってくれるってお母さんが言ってた。

それを今は信じるしかないような気がしていた――…

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