強迫性狂愛
それも、大きくなるにつれてどうでもよくなった矢先に、親父から百花の写真を初めて見せてもらった。


―…海の砂浜であどけなく笑っている姿。


家の芝生に座って本を読みながら、おやつを食べている姿。


母親と一緒に笑いあうその姿に―…俺は、一目見てみたいと思い、百花の下へ出向いた。


婚約者だんなんて、どうでもいいと思っていたのに


見れば見るほど、笑うと揺れるあの綺麗な黒い髪に


弾けるような笑顔に……俺は、心を奪われていた。


そうして―…あの病院で、偶然を装って会った時。


俺の手は震えていた。


陰華の巫女がどうだとか、そんなものはどうでもよかった。


ただ、純粋に百花を手に入れたい、と強く思った。


手段は選ばないと思い、転入したその先で、俺は―…



「それは、百花が決めることだ、親父が決めることじゃない」



百花の気持ちなんて考えずに、傍に置きたいと、そう願っていた。


だけど―…そんなのは、俺がただ虚しいだけだ。


日々百花と一緒にいるうちにそう思うようになっていた。


心を手に入れなければ、一緒にいたってただ虚しいだけだと…


俺と親父のように…


ただ―…


虚しいだけだ。
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