強迫性狂愛
「最初に引き離されたのは、私の方だ」


「………」


「元の形に戻しただけのことだよ?百花ちゃん」


「……ヒッ…ぅ…」



涙が止まらない百花の背中を、何度も優しくをさすった。



「お父さんも死んだの…?」


「さてね…」


「お母さんも……」


「…まぁ、詳しい話は今度ゆっくりしようじゃないか。今日からここでゆっくりと暮らすといい。百花ちゃんは、翔の婚約者なのだから…ね?」


「百花、行こう」



俺は、これ以上親父の話を百花に聞かせたくなくて、ゆっくりと百花を支えながら、さっきまでいた部屋に戻った。



「百花…」


「ヒッ…うぅ……」



両手で顔を覆って泣きじゃくる百花に、なんて言葉をかけていいのか検討もつかない。


だけど、俺が知った時には―…果音さんはもう……あの部屋にあの状態で…いたんだ。


あの写真を見せて、薄ら笑う親父に心底嫌気が差した。


本当に血の繋がった親子なのだろうか、とまで疑うほどだった。


……簡単に許してもらおうとは思わない。


だけど…



「ごめん…」



俺の小さく呟いた謝罪の言葉は、百花に…届いたのだろうか。


その日は、泣きつかれて眠ってしまうまで、百花の傍にいた。
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