強迫性狂愛



「…そうだな」



俺は、散らばった本を1つ拾ってから、独り言のように呟いた。


もっと、早くに―…柚香ちゃんのことに対して警戒をしていたのなら、こんなことには…と俺でさえ後悔の念にさいなまれるんだ。


迅の気持ちは、それ以上のはず。


だけど…そう何度も思っては、思い直す。



「迅が、やるしかないんだよ…」


「………」


「百花ちゃんの気持ちも、全部…」



百花ちゃんの受けた傷ははかりしれない。


俺たち男には、推し量ることでしかわからない苦しみなのだから…


迅なら、きっと…と、そう信じてやることしかできない。



「大丈夫だろ、…迅が本気を出したらすごいからな」


「あー、まぁ、そうだよな…」



海斗の茶化すような言葉に、少しだけ強張った心が緩む。



「それに期待するしかないな」


「だな、取り合えず…」


「休憩は後で、早く片付けろよ」


「なんだよ。今日のおやつは、プリンだって紅が言ってたんだよ」


「だから、なんだ」


「わかったよ…」



そう言って、本棚を直し始める海斗に、俺はほんの少しだけ口元を緩めて笑った。
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