強迫性狂愛
そのまま、俯いたままの百花を気にかけながら3時間目の授業が始まった。


授業など頭に入らず、気にするのは百花のことばかり。


視線を幾度隣にやっても、百花はパソコンを開くことも、ノートを開くことも、何もせず、ただ俯いていた。


そして、授業も後半に入った頃―…


静かな教室に、掠れた、涙声が響いた。



「迅……」



教室中の意識が一斉にこちら向いたのがわかる。


気にせずに、百花の方へと視線を向けた。



「どうした…」



いつから流していたのか、頬には涙の跡で濡れていた。


その顔を隠すこともせずに、俺の方に顔を向けていた。



「百花…」


「迅…、帰りたい……」


「………」



百花の言葉に、俺は静かに手を伸ばした。


手を掴むことに躊躇しながら、軽くだけ握って、「わかった」と頬を撫でて、席を立った。
< 654 / 745 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop