強迫性狂愛
「迅、顔上げて…」



そう言って、震える手で迅の髪の毛を静かに梳けば



「俺は…おまえを罵った」


「………?」


「俺は―…あの日、ずぶ濡れで帰って来た時…」


「濡れて…?」


「あの日だろう?cielで待っていたのは…あの日、俺に何を話すつもりだった。聞かせて欲しい」



あの日は…


そこまで思いを馳せて、百花は、静かに首を振った。



「もう、いいの。もう、終わったことだから…」



そう、涙を自分の手で拭いながら少しだけ顔を上げた迅に笑いかける。
< 664 / 745 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop